紋章砲の悲劇

ラプソディア

◆2005年 ◆シミュレーション
◆制作=コナミ
◆ストーリー=群島諸国において重要な兵器だった『紋章砲』。主人公キリルの父親は紋章砲を追って旅をしていた。ようやく海賊の持つ紋章砲を探し当てるが、それは通常とは違う恐ろしい威力を持つ『邪眼』だった。かつて群島諸国を苦しめたクールーク皇国と『邪眼』を巡る争いにキリルは巻き込まれていく。
『幻想水滸伝W』の二年後が舞台。Wのキャラも多く登場し、クリアデータがあればW主人公とスノウを仲間にできる。Wが好きな人にこの特典は嬉しい限りです。システムはRPGからシミュレーションへと大幅変更。各キャラのスキルにポイントを割り振るスキルシステムが復活。また背景などのグラフィックはリアルよりは絵本のような手描き風になり、キャラも等身が小さくデフォルメされていてかわいい感じ。頑張って人間の等身に近づけなくても、こういう小っちゃいキャラで十分イベントシーンは事足りると思います。
■ストーリー序盤に少年期のスノウと4主が登場。なんだこの私を喜ばせようとするサービスは(笑)。4主がかわいい!まともな武器が無くても薪2本で敵をボコボコにする逞しさに感動。スノウは相変わらずかわいいやら生意気やら。この時のキリルもまだ少年。上目遣いの猫目が良いなあ。キリルの父親ウォルターは声が渋い。この人の雰囲気は、なんだかTの坊ちゃんの父親テオに似ているものがある。 ■Wの3年前のエピソードがキリル達と関連して見られるのが、W好きとしてはやっぱり嬉しい。『罰の紋章』がブランドに移る経緯、Wに名前だけ出てきた海賊エドガー、キカの部下になる前のシグルド・ハーヴェイ(犬猿の仲) など、Wでは詳しく語られなかった過去が見られて良かった。キカが(エドガーの棺に縋り付いて「もうどこへも行っちゃ嫌だよ」と泣くシーンがもう…。死にでもしなければ一箇所に留まることが出来ないのが海賊なんだなあ。) ■さてストーリーついて。『紋章砲の悲劇』に度肝を抜かれました。(エドガー、ブランドと共に紋章砲に辿り着いたウォルターが、紋章砲の攻撃を受け、なんと魚人の姿に!)紋章砲にこんな効果が!?ちょっと待て、Wの時海戦でバカスカ撃ってたよ!しかも戦闘でザコ敵に(魚人)がいたような…。いっぱい倒して経験値もらってましたが…!Wプレイヤー大慌て(笑)。
■(魚人となったウォルターは理性を失って息子を襲うが、部下のアンダルクがキリルを守ってウォルターを倒してしまう。こうしてキリルは後の戦闘でも魚人にとどめを刺せなくなってしまった。)そしてWプレイヤーにとって、こちらの悲劇もかなり衝撃的。(ブランドの部下ペックが、紋章砲を機能停止させようとしていた時に、罰の紋章攻撃に巻き込まれ、紋章砲が暴発。半分魚人のような異形の姿に。あれ、この姿見たことあるような…?Wでブランドと一緒にいた暗器使い!!お前だったのかペックー!!まさか元はこんなさわやか青年だったとは。紋章砲の効果って、ただ死ぬよりもきつい…!そしてエドガーは死亡。Wでは敵でしかなかったブランドとペックは、こんなつらい経験をしていたのか…。) ■一方キリルも攻撃の余波を受けて大ケガを負い、アンダルクが大慌て。このアンダルクがもう根っからの従者属性だった。最初はグレミオっぽいのかなと思っていたが、保護者じゃなくて従者。(ウォルターの事もあって、キリルに一生従うだの罪を償うだの、とにかく罪悪感と共に)一生付いてくる気満々。自分を追い詰めるのが得意です、このメガネ。同僚にセネカがいて良かった。セネカはアンダルクと正反対で、楽天的で頼れるお姉さま。キャライラストを見ると、ブーツで誰かを踏みつけにしそうな気がしないでもない(笑)。ウォルターの使い魔ヨーンは、人間に似ているけど山羊の角や蹄を持ち、一切喋らず、戦闘にも参加しないので、影が薄くなり勝ち。しかしそれは衝撃の事実への布石だった! ■『紋章砲の悲劇』から3年後。キリルの傷が癒え、顔グラフィックも変わり、再び紋章砲を追う旅へ。途中オベル王の協力を得て、Wの懐かしいキャラがどんどん仲間に加わります。やはり楽しみは4主の仲間加入。無人島へ行くとそこには(巨大ガニを晩御飯にしようと奮闘)している元気そうな4主がいました。サバイバルライフ気に入ってる?(笑)Wでは主人公だったので喋らずにひたすら2択でしたが、ラプソディアではちゃんとセリフがあります。でも全然違和感なし。大らかで、良識的で、一歩退いたところがある感じ。ほとんど私のイメージ通りで嬉しかった。
■4主を連れて、ラズリルで平民として暮らしているスノウをお迎えに。何だか雰囲気が穏やかになったなあ。気負いが無くなって、誰かの役に立とうと自分なりの努力をする姿にジーンときた。ヘタレだった子が成長したよー!何だろう、この親心 (笑)。攻略本の全身図を見て、スノウらしい服装に笑った。そして仲間加入時はレベル1。他の人は早い時期に加入してもまだレベル6、7くらいなのに!なんでもスタッフが「やっぱりスノウだから」とわざわざレベル1に設定したらしい。うん、解っていらっしゃる!(笑) 戦闘がシミュレーションということで、慎重にいくのが苦手な私には難しいかと心配していたけど、なんとか自力でクリア。戦闘の大きな特徴として『属性効果』があります。土、火、水、風、雷の属性のうちの一つが各キャラに設定されており、戦闘で自分と同じ属性の地面に立てば、自動回復、攻撃防御の効果増加など有利に。相反する属性の地面にいるとまったく逆の効果。これを考慮して戦闘を進めなければなりません。頭使って進めるのは大変だけどやりがいがあって燃えました。 ■戦闘中キャラが倒されると、主要キャラ以外はランダムで『死亡』か『離脱』になります。死亡するとキャラは復活しないので、これでかなり緊張感が出ました。死亡者が出たらリセット!でも死に際のセリフにキャラの個性が出ていて面白いです。スノウ死亡時のセリフ(「痛いよ…。」)は、「スノウ、やっぱりお前はスノウだよ…。」と思いました(笑)。
■シミュレーションは戦闘が主体。なので飽きさせない工夫が必要です。特定の組み合わせでキャラをしばらく戦闘に参加させておくと『好感度会話』が発生。一組につき5種類、全組み合わせで445種類!キャラの意外な組み合わせや色々な一面を見ることが出来て、すごく楽しかった。これのお陰で戦闘が苦にならなかった。4主とスノウが会話していると、ジーンとしてしまう…。ああ、こんな風に普通に話せるようになったんだなあ。他にも好きな会話はたくさんあるけど、注目なのが、幻水シリーズで皆勤賞なのに謎が多いジーンの会話。今回ほど多く喋っているのは珍しいのでは。特にシメオンとの会話は、あんた達何者…と思ってしまいます。 ■もう一つ戦闘においてやる気を出させるのが『Sランクアイテム』。特定の条件(離脱者なし、少ないターン数でクリアなど)を満たすと、ごほうびとして良いアイテムが手に入ります。私は1周目ではまったく取れませんでしたが、試しに2周目で挑戦してみると、意外とサクサク取れました。何故なら2周目にはスキルランクや装備品が持ち越されるので、レベルは低くても防具、スキルは完璧。敵からのダメージを気にせずに突っ込めるのです。2周目はストーリーに変化は無くても、戦闘が楽しくてつい進めてしまいました。一つのゲームをこんなに長くやったことは最近なかったです。 ■本編に戻って、キリル達は紋章砲を追ってクールーク皇国へ。Wでは強大だった敵国も、実は内部分裂など大変だったらしい。(まだ幼い皇女コルセリア)が仲間に入ったせいもあって、敵も悪い人ばかりじゃなかったんだなあ、と実感した。しかし今まで普通の大砲だった紋章砲が(お魚製造マシン)に改造されてしまい、戦闘マップが(お魚天国)に。そして(コルセリアの目の前で、父、祖父、母3人とも殺されているのが何とも厳しい。しかもその内二人は魚人化。まだ11歳だよこの子。画面のキャラはちっちゃくてかわいいのに、内容はやけにシビアなラプソディア。)
■物語の根本にある謎。「ウォルターは何故紋章砲を追っていたのか」。途中で一応の理由(自国に軍事力として持ち帰るため)は明らかにされたけど、真の理由は他にあった。(異世界からこの世界に迷い込んだヨーンを元の世界に返すために、同じく異世界から召喚された紋章砲を調べていたらしい。そしてヨーンはキリルの母親だった。ということは、えーと……ウォルターったら!びっくりだよ、おいおい。終盤、異世界に帰るヨーンは、キリルを「生み直す」と言い、光に包まれたキリルは不老の体になってこちら側の世界に戻ってきた。これがちょっと謎。最初にヨーンが生んだ時は普通に成長してきたはずのに、何故今回は不老になったんだろう。) ■(無事に戻ってきたキリルに、コルセリアが抱きついて大喜び。)キリル18でコルセリア11という年齢差が非常にかわいいと思う。片方がちっちゃいと、ほのぼのする。そしてED。(数年後、キリルが誰にも告げずに一人で旅立ち、今までの物語をアンダルクが本に書いている)、という場面で終わる。これを最初に見た時は、普通のEDのように思えた。ところが、後から考えれば考えるほど、これがものすごく寂しい終わり方に思えてきた。(大事な仲間だと言っていたコルセリア達を置いて、一人旅立つのはどれだけ寂しいんだろう。しかもその事を書いているのが、あれだけ一生付いていくと言っていたアンダルクだというのが、すごく切ない。) ■『ラプソディア』総括。キリル達も十分好きになれたけど、やはりWのキャラ達のその後が見られるのが感慨深かった。Wでキャラ描写があっさりしていた分、今回の好感度会話で詳しく人物描写してくれたのが嬉しい。しかしW未プレイの方にはこの感慨深さが無いと思われるので、プレイする人を選ぶゲームではあります。戦闘の適度な難易度、飽きさせない演出は上手かったのでは。私はいつものことながら思いきりエンジョイできました。プレイ総合時間がものすごいことになっています…。好きなキャラについて書きたいことは尽きないのですが、きりが無いのでまた人物紹介を描きたいと思っています。


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