記憶に無い罪の意識 BAROQUE 　　 ◆1998年　◆アクションRPG　◆制作＝STING
	◆ストーリー＝ある日世界を大熱波が襲い、人も建物も世界も歪んだ。奇妙な異形が徘徊し、人は歪んだ妄想『バロック』に縋らなければ生き続けられない。偽翼をつけたマルクト教団達の拠点『神経塔』は歪み続け、入るたびに中が変貌する。主人公は記憶を失い罪の意識だけを抱えている。そして上級天使に言われるがままに神経塔の地下へと潜っていった。	■何度か最下層でイベントがある他は、ひたすら地下へ潜って各キャラのセリフを集める。それだけのシンプルなゲームだからこそ、想像の余地が多くあるのかもしれない。『妄想の余地』かな(笑)。数々の謎がまた魅力的。何故大熱波は起きたか。上級天使は主人公に何をさせたいのか。主人公の腰にある傷は何なのか。自分によく似た幻影は誰なのか。
	■独特で圧倒的な世界観と、ゲームオーバーすら物語に組み込んだ斬新なシステム。各地点にいるキャラ達は死ぬ度にセリフが変わり、真相が少しずつ明らかになる。イベントなどによってストーリーが進む従来のRPGとは大きく違う異色作です。戦闘は自分視点なので、後ろが見えないのに容赦無く背後からガツガツやられます。左の四コマの「VT」＝体力は時間が経つと減っていき、もたもたしてると死ぬ可能性あり。	■『バロック』という言葉の由来（歪んだ真珠という意味）は西洋音楽史で知っていたけど、それを『歪んだ妄想』と意味付けたセンスが素晴らしいです米光さん（シナリオ書いた人）！荒廃した世界、神経塔のデザイン、外見も精神も歪んだ人々、偽翼をつけた天使、声が出ない主人公、理由の解らない罪の意識。もう製作スタッフが一般受けなんて捨てたかのようなダークな世界が私のツボにはまりまくりでした。
	■記憶が無く目的もわからない主人公＝プレイヤーというシステムは他のゲームでもあったけど、『BAROQUE』ではそれがまた上手く生かされていると思います。色々な人から責められ詰られ、もう大変。「ひとつだって約束したはずだよね？」「すべてがお前の罪」「もぉ、遊びだったのね、信じらんないっ！」etc。あ、遊びって！？	■他のゲームと一線を画しているアイテム。回復は、倒した異形の肉や心臓！時間が経つと腐るので注意。ステータス効果があるのは寄生虫、注入液、焼印。敵に効果があるのは骨や刑具。もう、何て言ったらいいか…！これらはちゃんとグラフィックあります。心臓が床に落ちていて、フレッシュだとピクピク動いてます(泣)。
■全ての元凶ともいえる主人公の過去が切ない。（二人とも「生きたい」ではなく「ひとつのままでいたい」と願っていて、それが融合や大熱波などの悲劇に繋がっていったのかもしれない。それにしても不思議な兄弟。片方が起きている時もう片方は寝ていて、直接言葉を交わすことはなく、寝顔しか見られない。それでもお互いを思いやり、チェスをしたり、離れたくないと思う。双子なのに、兄はやけに大人びて、弟は子供っぽく、かなり性格が違うのも不思議。）	■主人公に似た幻影のセリフは、自分何やったんだろう…と不安にさせるセリフが沢山。「どちらが死ぬ？」「（今でも思い出すよ、あの痛みを。僕が殺されたときの、きみとの最後の日を！）」「裏切られたんだよね？」最初の登場の仕方は、かなり驚きます。	■一応こんなゲームにもヒロインらしき女性は二人います。アリスはふわふわ浮遊しながら主人公を責めたりアイテムあげても要らないとポイポイ捨てまくり。一人称「ぼく」がかわいい。イライザは綺麗な水を要求しつつも「来ないで」と逃げたり。えーと、どちらも非常に不親切なヒロインです…。
■ゲームスタートして必ず会うのが上級天使。神経塔の入り口に立っていて（実体ではなく映像）、「最下層へ行け」と居丈高に主人公に天使銃を放って寄越します。死ぬと怒られ、死ぬ度にセリフのバリエーションが何十と増えていきます。叱り、呆れ、おだて、懇願し、ヤケになり、諦め、たまに自分の過去を話し、冗談も言い、うっかり本音も言う。偉そうな割に、主人公に命運握られててかわいそう。そして最下層には彼の実体があり、見たときは度肝を抜かれた。あーこりゃあきついわ。主人公に怒りたくもなるわ。	■EDもかなり異色です。なにしろ（世界を救わない！バロックは全てのものの中にある。歪んだまま生きていく。よく考えるとこれ以上無いほどBAROQUEらしい終わり方でした。）BAROQUEの世界は独特すぎて、言葉を尽くしても説明できないのですが、私がBAROQUEを好きすぎてどうにもうまく書けないのをお察し下さい(笑)。	■好きなセリフ集。「ぼくは君に殺されるなら、嬉しいんだよ。」「苦しい。苦しい。なぜぼくたちはいっしょに生きられない？ 」「ひとつには、なれたのか。さぁ、浄化してくれ…。 」「アノ時の罪だけで、ワタシは地獄に墜ちられる」「世界の浄化そのものが歪んだ妄想」「これでぼくたちは…苦しむことができる。悲しむことができるよ。」

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