失くした過去を取り戻す

零〜月蝕の仮面〜

◆2008年 ◆アクションホラー
◆制作=テクモ
ストーリー=朧月島で十年に一度開かれる朧月神楽の最中、5人の少女が神隠しにあった。刑事によって助け出された少女たちは全ての記憶を失っていた。十年後、少女のうち二人が死亡。残された海咲、円香、流歌は失った記憶を求めて朧月島へ向かう。
■発売からだいぶ遅れてやっとWiiを購入したので、いざ数年ぶりのゲームプレイ!Wiiコントローラを使うのは初めてです。ヌンチャクを接続しないとプレイできないのが最初の難関。ヌンチャクで方向を定め、コントローラーでシャッター切って撮影なんだけど、なんか持つものが二つに分かれているって落ち着かない。一つのコントローラーを両手でがっちり握りしめたいんだよ!怖い時ってそうなんだよ! ■今回の物語は今までとちょっと違う。たいていは大昔に儀式が失敗して、現代の主人公達大迷惑、という話だった。今回は主人公である三人、流歌、海咲、長四郎が十年前の神隠し事件に巻き込まれている。つまり彼らは『当事者』。関係ない儀式や怨霊に振り回されるのではなく、自分達の記憶を頼りに、自分の物語を進める。そこが今までと違って面白かったし、感慨深いストーリーになったと思う。
■物語の重要なポイントとなる『月幽病』(げつゆうびょう)。この設定が面白かった。朧月島にだけある風土病で、精神疾患と記憶障害と呪いが混ざったような、なんとも幻想的な病。病の進行状況を『芽吹く』『咲く』と表現するのが風流なんだけど……かえって怖い(汗)。自分を認識できなくなる。大事な記憶もなくなっていく。流歌達は怨霊というよりもこの病と戦っていたんだろう。ちなみに患者達が残す日記はどれも相当怖い。だんだん文章がたどたどしくなっていくのが。 ■主要キャラについて。流歌は気が弱そう。思ったこと半分も言えてないだろうな(笑)。呟くひとり言はちょっとポエム。顔がなんか困り顔だよ。海咲は正反対で気が強い!目元もきりっとしてる。けど、自分に向けられる感情に鈍そうだな。円香が何を思っているかなんて、これっぽっちも気にしなかっただろう。長四郎は、流歌のお母さんが気になりつつも、追っかけているのはひたすら灰原。鬼ごっこは続くよどこまでも。彼の持つ武器「霊石灯」は役に立ったよおお!!
■戦闘、というか久しぶりの怨霊撮影。左手のヌンチャクで一生懸命方向変えて、右手のリモコンでシャッター切ってると、なぜか腕が交差するんですけど。力入りすぎ。そして怨霊がこっちへ迫ってくると、耐え切れずにシャッター押してしまう。相変わらずチキンです。長四郎の霊石灯はボタンを長押しすると照準範囲が広がっていくタイプ。これが結構使いやすかった。『零』において男は非力なんだけど、それをカバーする便利アイテムだった。フィルム使わないし! ■驚いたのが、回復アイテムの獲得方法。落ちてるのを拾う場合もあるんだけど、その他に撮影ポイントと交換で手に入る。ポイントは戦闘で撮影していればどんどん溜まっていく一方だから、実質好きなだけ回復アイテム手に入るんじゃない?イエーーイ!!戦闘下手な私になんて親切設計なんだ。フィルムもポイントと交換だから、その分も考えて交換しなければならないけど、それでも余裕でポイント足りました。
■2周目にポイント取っておくとか考えなければ、回復アイテムとフィルムはガンガン使えて助かった!でもEASYだから余裕があったのかなあ。あ、コスチュームにもポイントが要るのか。浴衣にしてみたかったな。 ■射影機と霊石灯はレベルアップアイテムで強化するので、それをどう3人のプレイヤーキャラに割り振るかが悩ましい。私は結局四コマにあるような理由で流歌を優先的に強化しました。
■こんな島民が怪しげな病で死滅したような島へ流歌たちがわざわざ来たのは、自分の過去を探したいから。来ない選択肢もあるのに、自分の過去の記憶がないという不安と焦燥は、恐怖の中でも彼女達を前へ進ませる原動力になる。それほど記憶や思い出は、その人を形成する重要なパーツなのだ。たとえ先へ進むほど、思い出すほど、『咲く』可能性があっても。つらい記憶だけでなく大事な思い出を取り戻した彼女達は、幸せそうだった。
■まあ、あの、(円香はどうだったか分からない…(泣)。『零』シリーズでは必須の最初の犠牲者とはいえ、顔を覆って彷徨う姿がかわいそう。でも、そこがいい気がする(笑)。そうかこれが萌えか。HardENDでは成仏したっぽいので、良いのかな。
■『零』の怨霊だらけな世界の元凶は、だいたい犠牲となった巫女の恨みつらみなんだけど、今回それが違った。『月蝕の仮面』の巫女は、犠牲になっていない。むしろ(彼女のために島民全てが犠牲にされている)!なんて画期的!まあほんとの元凶は(シスコンの弟)ですが。私は今回のこの設定は好きだった。昔からの掟やら儀式やらに囚われる人達とその犠牲になる巫女ではなく、大事な人のために手段を選ばず被害も無視して突き進む身勝手な人間の話。今回の元凶設定には魅力があった。 ■療養所という狭い世界で、月幽病に翻弄されながらも生きていた少女たち。その世界を外から見る立場だったのが長四郎。流歌や海咲視点では分からなかった療養所の異様な雰囲気が、長四郎視点だと怖いくらい分かる。違法な治療(脳手術!)や灰原耀の暴走、院長の隠蔽、少女5人誘拐事件。月幽病の治療がなんか怪しすぎてアワワってなる。あの変な装置、恐ろしい…。患者の怨霊も怖い…。少女たちの大事な世界だったんだろうけど、やばすぎる、この病院。
■だいたい『零』シリーズにおいて一人は必ずいる少女系怨霊。今回は亞矢子という、流歌たちと同じ療養所に入院している少女だった。この子がまあ生来のサディスティック少女。被害者は主に円香(泣)。オモチャ(ほんとのオモチャだけじゃなく、色々)を壊すのが趣味。怨霊になってもいないうちから看護婦引き摺るって恐ろしい。でも自分の生い立ちは知っていたんだろうか。一人苗字がないし、院長の意向で特別待遇でも、(娘とは明記されていない。そのわりに灰原や朔夜のメモには名前があるから妹かと思っていたら…。うん、びっくりだったよ。死ぬ間際の「おかあさん」はちょっと切ない)。 ■今まで怨霊と言えば神官や宮司や何々家の当主が多かったんだけど、今回で怖かった怨霊はやっぱり入院患者!黒衣の女とか、怖い〜!部屋も不気味過ぎる。あのトルソー(マネキンみたいなやつ)調べるだけで涙目。しかもそれの怪奇現象を戦闘中にファインダーモードで見てしまって更に涙目。あとイヤだったのは院長かなあ。「治療の時間だよ〜…」って来るなーーー!なんか気持ち悪いんだ。 ■ここからほとんどネタバレ。流歌について。大人しそう…なわりに服の露出多いよね(笑)。まあ『零』シリーズの特徴ですな。彼女の欠落した記憶は、父親について。(次々に見つかる手記を読むと、面の研究一筋で家庭を顧みないDV親の気配満々だったので、最後のED映像は良い意味でどんでん返しだった。良かったね、流歌…!それまで散々バトルしましたが(笑))。
海咲について。気が強くて我儘だけど、記憶の欠落はやっぱり淋しかったんだろう。記憶が戻り、人形を抱きしめて泣いている姿が切なかった。霊媒体質のせいで病の進行が早かったし、良い入院生活ではなかっただろうけど、朔夜との思い出を取り戻せて良かった。切ない思い出に泣くことだって、きっと幸せのうちの一つだろう)。
長四郎について。メモ代わりの記録テープがあるんだけど、この人いい声してるよね。しかし(最後には…(泣)。ラストバトルで流歌を助けてくれたシーンは、さすが大人と思った)。
円香について。彼女が各所に残すメモは恐怖の一つだったな。(なんかこう、徹底的に不幸。HardENDは、海咲を許して、助けてくれたってこと?海咲は最後まで朔夜にばかり気を取られて、円香をほとんど思い出してなかったようなんだけど…。ああ一方通行(泣)。でも好きだったよ。流歌達と比べると素朴な顔立ちとか、露出の少ない外見とか、報われなさとか、良かったよ。)。 朔夜について。この中で一番外見が好きだな。着物姿に髪はウェーブがかかっていて、美人!大人だけど少女っぽさのある顔だった。(精神年齢が発症時で止まっていたせいかもしれない。亞矢子を生んだ経緯とか、何を思っていたのか知りたかったな)。『咲いた』状態で出てくる時の恐ろしさと言ったら…。おどろおどろしい怨霊よりも、顔の部分がモヤモヤっと崩れた状態のほうが恐怖が増すよ。
灰原について。思い切りよく自棄になりすぎだよ。姉の病を治したい一心で犯罪行為はするけど、手記や声を参照するに冷徹なイメージだったのに、なんで(『もう終わり→刺す』になるのか。はた迷惑な(笑)。しかし長四郎にしてきた電話の内容からすると、ループの自覚がありながらもわざわざ付き合っていたのか。鬼ごっこ飽きなかった?)。
■流歌のお父さんについて。(典型的な芸術家気質だったな。面の最高傑作を求める心理に、何の不思議もないよ。そういう人種がいるのは分かってる。だからこその意外性。良かったな。矛盾しているようで、それが人間ってことで)。
■ラストバトルは、今回一撃死の攻撃がなかったせいか、一度でクリアできた!すごい私!快挙!あのピアノの操作は、音楽的な難易度じゃなくて、ただ単にwiiリモコンの微妙なカーソル操作が大変だったな。何度か出てきて散々苦労したけど、なぜかラストバトル後のピアノは一発OK!旋律を全部覚えて譜面を見ずに、少しずつ早めにカーソル移動させたのが良かったのかも。 ■総括。儀式や災厄ではなく、月幽病という記憶や自我を失っていく病が、悲劇の全てを引き起こしていくのが、今までにない『零』で、すごく良かった。病に苦しむ日々でも、心に残る思い出や、大事な人や、忘れたくない笑顔がある。それらが全て『なかったこと』になるのは淋しすぎる。それが少女たちの恐怖へ立ち向かう原動力であり、(灰原耀の犯罪動機の根源でもあった)。切なさに床ゴロゴロしたくなるストーリーでした。




人物紹介は後日追加。


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